今までに訪ね歩いた場所についての備忘録。
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数々の歴史の舞台となり、フランスを代表する庭園としても有名なヴェルサイユ宮殿。
学生時代、地平線のかなたまで人工的に造られた庭園を歩いてまわり、この庭のハイライトは宮殿周辺からの眺めで、移動は馬か馬車の使用を前提に計画されていると思い知らされた。

どこまで行っても変わり映えしない景色、先へ進むほど大味な刈り込み。庭園内の施設と施設の間は恐ろしく離れている。
宮殿内の黄金装飾も、日本の蒔絵や截金(きりかね)を見慣れた目には雑な仕事としか映らない。

フランス式の宮殿に落胆してから十年、やっとヴォー・ル・ヴィコント城を訪れる機会を得た。



ヴォー・ル・ヴィコントはヴェルサイユの庭園を設計した人物 (ル・ノートル) が、ヴェルサイユよりも以前に手掛けた庭だ。この庭をもってフランス式庭園が始まるとされる。

美しい並木道を抜けて、幾分厳めしい門構えから館に入ると鏡張りの扉がある。今、通ってきた景色が映るこの扉を開けると、広間の向こうに美しい庭が広がる。鏡の中の国に来たような不思議な演出。

果てしないヴェルサイユとは違って、適度な広さが心地良い。
ヴェルサイユは 「森に引かれた道と水路のヴィスタ(軸線)」 のイメージが強いが、ここヴォー・ル・ヴィコントは 「森に包まれたフラットな庭園」 の雰囲気を感じさせる。


刺繍(ししゅう)花壇の繊細な美しさはどうだろう。地上に吸い付くように、まさに 「大地に刺繍された」 ように見えるのは花壇が一段掘り下げられ、ツゲの刈り込みが周辺の地面と一体となるよう計画されているからだ。様々な色の砂利と芝生、微妙な高低差を利用することで整然とした美しさと繊細さが同居している。



館を出て、庭園を進む。
なだらかに下る敷地を利用して創られたテラスが空間の分節となってリズムを創り出す。

庭の中央に位置する池まで行くと、新たに左右に眺望がきくようになっていて、左右で景色が違う。全くの左右対称ではないのだ。

屋内からは庭のアクセントとして見えたゼラニウムの植木鉢や西洋イチイの刈り込みも、近くに行くと見上げるように大きく迫力がある。

庭を歩いていると、その刈り込みたちが動き出す。
同じ大きさの刈り込みが距離をおいて点在するため、錯覚でダンスでもしているかのように動いて見えるのだ。



庭の視線の先にある、丘の上の彫像を目指すと、館の展望台からも見えなかった大きなカナル(水路)が姿を現した。
そのカナルの手前には館に背を向けて豪華な壁泉噴水彫刻が設えられてある。室内から眺めるだけではこの壁泉噴水の存在に気付かない。

庭を進んで初めて気付くこの贅沢な空間。そう、この庭は館から眺めるだけでなく、その中を動いて楽しむ庭でもあったのだ。
自然の小川を堰き止めて作ったこのカナルでは舟遊びも行われたという。※


「足を進めると違った景色が立ち現れる」


日本の池泉回遊式庭園や中国庭園、イギリスで生まれた自然風景式庭園にのみ使われるこのフレーズは、フランス式庭園発祥にして最高峰と言われるここ、ヴォー・ル・ヴィコントにも当てはまる修辞句だったのだ。

■ 現地で録画した動画はこちら(音が出ます)■



※参照 『ヴォー・ル・ヴィコント春秋 -魅惑のフランス庭園-』 岡崎文彬著


 
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