今までに訪ね歩いた場所についての備忘録。
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古くから都の置かれた奈良には、シルクロードを通じてもたらされた数々の至宝があるが、南都楽所(なんとがくそ)に伝えられる雅楽もその一つだ。


年の瀬も迫った十二月、奈良の春日大社では春日若宮おん祭(かすがわかみやおんまつり)という盛大な祭りがとり行われる。

3日間に渡って行われる祭りには、時代装束を着た行列や流鏑馬(やぶさめ)、競馬など様々な演目が行われるが、その中でも祭りの華となるのが「お旅所祭り」だ。
緑の杉枝で葺かれた御旅所の前に芝の舞台が設えられ、神楽(かぐら)に始まる芸能が半日に渡って奉納される。

舞楽奉納には千年の伝統をもつ南都楽所の人たちが演奏を行うが、その楽隊は総勢30名近い楽人で構成される大所帯である。

それだけの大人数で演奏するにも関わらず、楽隊には指揮者がいない。大太鼓(だたいこ・写真上右)がゆるやかなリズムを刻むだけだ。


楽隊はいくつかの楽器で構成され、役割ごとにひとかたまりとなって座っている。演奏者の手元には火鉢が置かれ、暖をとると共に楽器を暖めながら演奏が行われる。

同じ楽器を受け持つ人が数人いるため、ある人は演奏の最中に突然チューニング(楽器の調整)を始めたり、中にはおしゃべりを始め出す演奏者もいて、西洋のオーケストラを見慣れた目には、その「あいまいな役割分担」がとても不思議に感じる。

この「あいまいさ」こそ、雅楽が大陸では消滅し、日本のみで伝承されてきた歴史の理由なのかもしれない。


雅楽の奉納が終わった後、深夜0時近く、御神体が神社に帰る「還幸の儀(かんこうのぎ)」が行われる。
2本のたいまつ以外すべての光を消して行われる儀式であるため、カメラや懐中電灯、携帯電話の使用禁止が申し渡される。

暗闇の中たいまつを引きずって歩く先導人の後、榊を持った神主が幾重にも御神体を取り囲み、「ヲー、ヲー」と絶え間無く声を上げながら進んでいく。
楽隊もそれに続き、暗闇の中に響く肉声と器楽音が不思議なコントラストを見せる。

現在では混乱が起きないよう、参拝者の歩く順番も管理され、昔日のような原始的雰囲気が味わえないが、かつて春日の原生林の暗闇で行われたこの儀式はとても神秘的なものだったと想像される。

祭りは人の手で行うものである以上、時代とともにその関係性を変えていくものなのだろう。
860年以上途切れることなく続けられているこの祭りにも、能や大名行列など、その時々で新しい内容が付け加えられている。


これからも、あるものは変化し、あるものは継承されるといった歴史をたどることだろう。そんな歴史の変遷を考えさせられるお祭りだった。


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