今までに訪ね歩いた場所についての備忘録。
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フランスはパリ、フォーシーズンズホテル・ジョルジュサンクは美しい花の装飾で名高いホテルだ。

大理石や金箔がふんだんに使われたクラシカルなロビーや通路には、大きなガラスの花器が並べられ、高価な花がダイナミックに活けられている。

逆さまに水に差し込まれた黒いカラー、葉を除き、かしぐように活けられたアジサイなど、風変わりなディスプレイはインスタレーションアートのようでもある。

この花を演出するのが、ジェフ・リーサム。
モデル出身という彼の経歴は、花とファッションの近しい関係を表しているようで興味深い。

あるインタビュー記事によると、花に視線を集めるため、花器は透明なものしか使わないという。

実際にホテルを訪れてみると、ガラス花器に反射する光が、きらびやかな空間と一体化し、花を引き立たせるだけでなく室内全体を軽やかで華やかな非日常空間へと変貌させている。

水に浮かべられたり、沈められたりした花々はその光と一体になり短い生命に一瞬の輝きを放っているかのようだ。


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1694年から建設が始められた不思議な庭、レブンスホール(レヴァンスホール)ガーデンはイギリスの北部、湖水地方の小さな町ケンダルの郊外にある。

トピアリー(装飾的刈り込み)の庭で名高い庭園だが、6m近くもあるトピアリーが並ぶ庭はチェスをテーマにしたとも言われており、ユーモラスな雰囲気を漂わせる。

以前、ランドスケープデザイナーの発言で

「人間が自然を制御しようとする意志と、木々が自由に伸びようとする意志との間で起こる<形の揺らぎ>が人と自然の関係を表していて興味深い」

という一文を読んだことがあるが、この庭園の魅力はまさにそこにある。
不思議に歪んだ形が、永い時間をかけて行われた人と自然のコラボレーション(共同作業)を想像させて面白い。
そして、その自然に歪んだ形こそがユーモラスさを醸し出しているのだろう。


園内には生垣に沿った細い砂利通路や、生垣に囲まれた芝生の小部屋等もしつらえてある。音がザクザクと鳴る砂利の通路から、感触の柔らかな芝生の小部屋へ足を踏み入れると急に足音が消え、静謐な空間への変化が感じられる。
そのようなきめ細やかな空間構成のしつらえも魅力の一つだ。

この庭を訪ねた当時(1993年)は4人の専属庭師がこの庭の手入れを行っていると聞いたが、現在は5人の庭師が300年の伝統を受け継いでいるらしい。
ルイス・キャロルの小説に出てきそうな不思議な空間は、現在も保たれてているだろうか。


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5世紀に西ローマ帝国、続いて東ゴート王国の首都が置かれたイタリアの古都、ラヴェンナの古い教会。

ラヴェンナの街には5~6世紀にかけて作られた素晴らしいモザイク画が多く残されているが、その中でも特に印象深かったもののひとつ。

多くのモザイク画は華麗さや荘厳さを感じさせるが、ここの絵は不思議な輝きをもつ黄緑色の野原に、十二使徒を表す子羊や、ユリの花などの様々な植物が配置され、とても牧歌的な雰囲気を感じさせる。

この大きな半球状のドームに描かれたモザイク画を目の前にすると、のどかな草原に包まれるような感覚におちいる。球形の空間ならではの効果だろう。
モザイク画にはガラスや大理石が使われるため、絵には光沢のある素材が創り出す不思議な浮遊感も感じられる。

この教会を訪れたのは夕方だったが、窓から入る光を天井が優しく反射させて、ほのかに浮かび上がり、見るものを幸せにするような光景だった。


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アンドレ・シトロエン公園はパリ・セーヌ河のほとり、自動車メーカー・シトロエンの工場跡地に作られた公園で、1992年に開園している。

初めてパリを訪れた1992年当時、インターネット等という便利な情報源が無かったためこの公園の存在を知らず見過ごしてしまい、その10年後にやっと訪れることが出来た思い出深い場所。

この公園を作るにあたって1985年、国際コンペ(競技)が行われた。本来ならば一つの案のみが選ばれるところを、上位2つの案があまりに似通っていたため、 2つの案を組み合わせて設計されたという変わった経緯を持つ。90年代を代表するランドスケープの一つだと言えるだろう。

公園は幾何学的な構成になっており、広い芝生広場と、それぞれテーマを持った小さな庭の組み合わせで形づくられていて、噴水や滝などの水景、「パルテール」と呼ばれる繊細な温室などが配置されている。

小さな庭は橙・赤・青・緑・銀・金・白・黒といった色で分けられており、それぞれに工夫を凝らした植栽が行われている。

特に最初の6色の庭は「集列の庭」と呼ばれ、金・銀・銅・鉄・水銀・錫の6種の金属、もしくは視覚・嗅覚・味覚・触覚・聴覚に第六感を合わせた6つの知覚になぞらえられている。
中でも銀の庭は銀色がかった葉の植物が集められ、詩的な雰囲気を漂わせる(写真左上・右下)

フランスには17世紀に完成した「フランス式庭園」と呼ばれる眺望の良い幾何学的な庭の伝統があるが、この公園はその伝統を上手く現代に蘇らせた好例だと思う。

フランス式庭園には装飾的な刈り込みや、遠近感を強調する高木の刈り込みがつき物だが、右上と左上の写真に見られるように、この公園にも高さ・幅ともに4mを超える高木の刈り込みが並ぶ。それぞれが一軒家ほどもある大きな立方体の刈り込みは、水平線の広がる風土ならではのものだろう。


幾何学で構成された公園と聞くと非常に冷たい印象を感じるかもしれないが、実際この公園を訪れるとその気持ち良さに驚かされる。
実際、パリ市民からも愛される公園のようで、見学した日にも大勢の家族連れが訪れていた。
広々とした空間と緻密な空間の絶妙な組み合わせが、開放感と親密な快適さを感じさせるのだろう。

洗練されたデザイン・詩的な美しさと快適性が両立する非常に興味深い公園で、このような公園を市街地に持つ街は本当に幸せだと思う。



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世界で唯一、神ではなく人間が国土を創り上げたと言われるオランダ。そんなオランダにも神が創った土地がある。

オランダ中部に広がるホーへ・フェルヴェ国立公園は砂丘のような荒野、深い森など、干拓した平原が広がるオランダでは珍しい起伏のある風景が5500haにわたって広がる、オランダで最大かつ最古の国立公園だ。

その自然に寄り添うように、クレーラー・ミューラー美術館はたたずんでいる。

ゴッホの収蔵で有名な美術館で、アムステルダムのゴッホ美術館に並ぶコレクションを誇る。
日本の教科書にも登場する絵が数多く飾られ、その絵の前に立つと懐かしいような不思議な気持ちになる。
美術館は新館と旧館に分かれており、ゴッホの絵は旧館に、現代美術が新館に展示されている。旧館はレンガで造られ、内部を白い壁に守られた柔らかな印象、新館はガラスがふんだんに用いられ、森と一体化した光と影が交錯する建築だ。

しかし、この美術館を訪れて最も印象的なのは屋外空間だろう。

照明計画に不満の残る旧館内部とは違い、明るい日差しで照らされた外部は、森と芝生が組み合わされた庭に彫刻が点在していて、爽やかな気持ちで美術を鑑賞できる。
訪れた五月にはシャクナゲの花が満開で、その艶やかな花、森の風に含まれる松ヤニの甘い香り、嘘のように澄んだ鳥の声など視覚だけではない、様々な体験ができた。

視覚障害を持つ人たちが彫刻を手で触って鑑賞する、というプログラムが行われていたのは、そんな環境もあってだろうか。

美術館の外の国立公園は貸自転車によってサイクリングが楽しめるようになっており、美術館の前にもシンプルで美しい自転車置場が整備されている。

オランダは世界でも有数の自転車王国で、首都のアムステルダムにも立派な自転車専用道路が設けられているが、環境への負担がすくないこの交通システムは、日本でももっと検討されてよいものではないかと思う。

車やバイクとは違い、土地の起伏を身体で直接感じる乗り物。
険しい坂道は無理でも、平野部に広がる都市やその側を流れる大河沿いなどを気持ちの良い空間で繋ぐことは可能ではないか。
自転車道のネットワークは、視覚とは違う自然の体感方法、車のスピードとは違う生活時間の流れを産み出す可能性を秘めている。



 
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